西欧都市形成論におけるブルグスとブルゲンシス
ブルグスとブルゲンシスについての詳細な研究は、宮松浩憲氏の著作、西欧ブルジョワジーの源流 ブルグスとブルゲンシス 九州大学出版会 1993, にてその要旨が記述されているといえます。
そもそも、まず、西洋都市形成論において、ブルグスとは、修道院や俗界領主層の居住地などのそばに、遍歴商人層が居をかまえたことに由来します。この商人定住地のことをブルグスと表現します…。
やがて、ブルグスは、前都市的核、すなわち修道院や俗界領主層の居住地などと一体化し、これに堅固な囲壁が作られることによって、ブルゲンシスへと発展します…。以上は宮松氏が、1988 年の論文集の中でも説いているところです。
宮松氏の著作、西欧ブルジョワジーの源流は、かなりの力作で、用量もおおく、とても簡単にはその詳細な内容を表現できません。しかし、そもそもブルグスとブルゲンシスについての上記のような簡略化された把握があれば、わたしたちは、中世都市の形成の起源を、おおまかに掴むこともできるでしょう…。
大規模なブルグスやブルゲンシスの登場は、中世盛期に入るまで待たねばなりません。ただ、西洋都市形成論において、俗界領主層や、修道院などの聖界施設のもとに、村落が形成され、それが大規模化することはままありました。しかし、これだけでは、遍歴商人層抜きの住民の集まる土地になってしまいます。遍歴商人層が商人定住区(ブルグス)を形成してはじめて、その居住地は、商人をふくむ都市化された居住地となると考えてよいでしょう。中世都市にはどこにも商人がいますが、この商人の定住化の問題を、掘り込んで研究したのが、ブルグス・ブルゲンシス研究だと捉えてよいでしょう。1993, の時点で、宮松氏は、この研究についてかなりの頁数を費やされており、その研究も専門的なものです。
われわれは、中世都市の形成を考えるときに、そこにはいつも常に商人がいるという前提でイメージしてしまうかもしれません。しかし、より正確に言うならば、そこには、そもそも商人の定住という問題があり、既存の前都市的核との融合により、はじめて商業都市としてのスタートを切るのだという、以上の研究の前提が存在すると、察せられます。宮松氏の研究は、ピレンヌから続く中世都市形成論の問題に、かなり詳細な見取り図を付けたものであると把握してよいでしょう…。
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